The Medical & Test Journal(別冊), 18 JAN 1999.

早期リウマチの診断と治療の実態

早期リウマチの生化学的変化

早期リウマチの治療

山本一彦 先生

山本純己 先生

吉野谷定美 先生

水落次男 先生

  • 早期リウマチとは
  • 早期リウマチの生化学的変化
  • 早期リウマチの治療
  • ACRの診断基準と治療開始時期
  • リウマチの診断基準
  • 早期診断基準とDMARD
  • 抗ガラクトース欠損IgG抗体とは
  • 抗ガラクトース欠損IgG抗体の測定意義
  • 90%を超す高い陽性率
  • ガラクトース欠損IgGのメカニズムと病態との関連
  • 自己抗体GP30の特徴
  • 早期リウマチと予後
  • 早期リウマチの生化学的変化

    図1:ヒト免疫グロブリンGの糖鎖構造

    山本(一)水落先生、早期リウマチを生化学的にみるといかがですか。

    水落 私たちは、1年以内と1年以降でみたことがあります。リウマトイド因子の反応相手であるIgGの糖鎖構造を調べていきますと、リウマチではIgGの糖鎖のガラクトースがなくなるという異常がありまして、1年以内も調べてみると、同じ糖鎖の異常がありました。

    *

     ですから、生化学的なレベルで見ると、早期も1年以上経ったものも、1年以内も同じではないかという認識はしています。(図1)

    山本(純)臨床的にはそうでないかという気がします。

    山本(一)特に炎症が慢性化した後にガラクトースが欠損するというのではないですね。

    早期リウマチの治療

    山本(一)次に、慢性関節リウマチは早く治療をしようということですが、どうして早く治療をする必要があるのでしょうか。

    山本(純)いろいろな問題点がありますが、第1番目には早期に発見して、早期に的確な治療をすれば…。的確という意味がちょっと難しいのですが、例えば早期にDMARDを投与した場合、リウマチの進行が収まるかどうか。関節破壊が予防できるかどうか。予防できなくても、関節破壊を遅らせることができるかどうか。これが第1の問題点です。

     ではDMARDを早期に投与した場合、どのくらいがよくなって、どのくらいが悪くなるのか、最近いろいろな報告が出ています。われわれの調査では、発症1年以内にきちんとDMARDを与えれて治療をすれば、大体3分の2の症例はアンダーコントロール、関節炎症状を抑えて、痛みもほとんどなく日常生活も不自由しない。レントゲン変化はちょっと別なのですが、臨床的には非常に安定した状態を保つことができるということです。

     しかし、残念なことに、3分の1ぐらいはそういう早期にDMARDを投与してもどんどん病状が進行していくということも現実です。いままでいわれていましたようにRAは治らない病気ではなくて、早期にちゃんと治療すれば、3分の2はうまくコントロールできるというのは大きな収穫ではないかと思います。そこに早期診断、早期治療の重要性が1つあると思います。

    山本(一)アンダーコントロールというのは寛解ということも、その意味に入れるということですか。

    山本(純)いいえ、症状の全くなくなった寛解は2年間の治療で大体15%ぐらいです。

    *

    ですから、あとの50%ぐらいがいわゆるコントロールできている状態で、ADLもほとんど不自由しないということです。

    吉野谷 その辺がいつも問題になりますが、例えば、1人の患者に両方の治療をやめることはできないので、かなり多数で検証しないと、確実なことはいえません。寛解例があるとか、DMARDをやって骨破壊の進展が抑えられているとか、これはかなり確定的なことだと考えてよいのでしょうか。

    山本(純)われわれのデータでは大体100例ぐらいの患者さんを2年間ずっと追った結果です。われわれのところには発症1年以内で、未治療だったリウマチの患者さんが約400名登録されていますが、そういう方をプロスペクティブスタディでずっと見ています。

     ところが、2番目の問題として、DMARDでよくなる患者さんはよいのですけれども、一般にいま使われているDMARDで収まらない、あとの3分の1の患者さんに対してどうするのか、従来の治療法を初期から変えるほうがよいのではないかということです。

     ということは、もっと強力な、例えばコンビネーションセラピーとか、そういうのを初期から使ってもよいのかどうかが問題になってきますね。

    吉野谷 その前に早期リウマチと診断した症例に、DMARDを使うというのはかなり勇気がいります。例えばメソトレキセート(MTX)などの非常に強い薬がありますが、確実にRAだといえないと、なかなかこれで治療しようという踏ん切りがつかないと思います。

     アンコントローラブルな症例ではなくて、コントロール可能な人であっても、明らかにリウマチが発症したと証明できないと、なかなかDMARDを投与できないと思います。少量のステロイドはよいとしても、そこに初期リウマチ診断をきっちりしないと、医者としての倫理の面でかなり揺れ動いてしまうわけです。

    *

    山本(一)DMARDを投与したら、どういう問題があるかということを吉野谷先生、お願いします。

    吉野谷 その前に、DMARD自身が各国で少し違うような点があるようです。例えば、欧米ではクロロキンという抗マラリア薬がよく使われますし、日本ではリマチルとか、カルフェニールとか、アクタリットとか、日本独自のものがあります。共通しているものといえばMTX。MTXはまだ承認が下りていませんが、近々承認が下りるとして、あとサラゾピリンです。あとゴールド、ペニシラミンも共通していますが、ペニシラミンは最近下火になっているみたいです。日本ではここ数年来DMARDの中でリマチルが断然使用量が増しているようです。

     けれども、これは外国にない。外国に行くと、また別な薬が使われているので非常に戸惑いがあります。メソトレキセートとゴールドについては共通していますが、これがまた非常に毒をもって毒を制するような薬で、はっきりした診断があって、リウマチが発症したという確証がないと、なかなか使えません。諸検査をしてからでないと、使えないので、臨床家が非常に迷う点があると思います。

    山本(一)DMARDを投与してしまうと、どのような不利益が患者さんにあるのでしょうか。

    吉野谷 各DMARDで個々の特徴的な副作用があります。ゴールドのときに血尿がくるとか、肺の線維症が起こるとか、あるいは発疹が非常に多いとか、メソトレキセートであれば、肝臓毒があるとか、あるいは骨髄抑制が起こる。白血球減少が起こる。肺線維症も起こしますね。リマチルは蛋白尿とか、腎障害が非常に有名です。

     DMARD独特の副作用がありますが、副作用が出るぐらいまで使わないと、また効かない症例も多いわけです。非常に少量で初期にうまくコントロールできればいいのですが、なかなかそういかないので、一般臨床家としてはそこが非常に不安なわけです。


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